最近の蓄電システムの傾向として、これまで主流だった鉛蓄電池を採用した製品に代わって、リチウムイオン電池を採用した製品が増えてきています。それは、リチウムイオン電池が蓄電システムに求められているすぐれた特長を有しているからと言えます。
蓄電システムに利用されるリチウムイオン電池には、いくつかの種類がありますが、まずここではリチウムイオン電池の特長をあげてみます。
◆エネルギー密度が高い
リチウムイオン電池の1kg当たりに蓄電可能な電力量(エネルギー密度)は、約120Wh/kgです。
これは鉛やニッカド電池のエネルギー密度の約3倍、ニッケル水素電池のエネルギー密度の約2倍になります。
エネルギー密度が高いため蓄電システムのサイズや重量をコンパクトに抑えられます。
◆出力電圧が高い
リチウムイオン電池1セル当たりの出力電圧は約3.7V(リン酸鉄リチウム電池は3.2V )です。
これは、ニッカド電池やニッケル水素電池の約1.2V/セルと比べると約3倍になります。
◆メモリー効果がない
ニッカド電池やニッケル水素電池で再充電するときは、十分に使い切ってからフルに充電しないと、起電力を低下させることになります。これを電池のメモリー効果と呼びますが、リチウムイオン電池はメモリー効果がないため継ぎ足し充電が可能です。
◆サイクル寿命が長い
一般用蓄電システムの場合、充放電を繰り返すサイクル寿命は、鉛電池の約1.5倍と言われています。
◆自然放電が少ない
リチウムイオン電池に自己放電率は、ニッカド電池やニッケル水素電池の5分の1程度となります。
→一度充電しておけば、数ヶ月はそのまま再充電せずに使用可能です。
◆エネルギー効率が高い
エネルギー効率(充電した電力量を100として、放電可能な電力量)で表わすと、リチウムイオン電池は約95、鉛電池は約87です。例えば、電力容量が3200Whの電池の場合、リチウムイオン電池では3040Whの放電が可能ですが、鉛蓄電池では2784Whということになります。
◆ENEACCUMシリーズがリチウムイオンポリマー電池を採用した理由
蓄電システムに用いられるリチウムイオン電池を大きく分けると、次のA、Bの2つの流れがあります。 |
A: |
主にハイブリッドカーや電気自動車などに採用されている電池…リチウムイオン電池(電解液を封入したもの)やリン酸鉄リチウムイオン電池。 |
B: |
主にスマートフォンや携帯電話などで採用されている電池…リチウムイオンポリマー電池。 |
このうちENEACCUMシリーズでは、Bのリチウムイオンポリマー電池を用いていますが、その理由として、小型化が可能であること、安全性が高いこと、技術革新が早いことなどがあります。
スマートフォンやPDAに用いるバッテリーには、コンパクト化と安全性の高さが求められる上に、スマートフォン新機種投入に合わせて機能向上なども求められるため、日本の電池メーカーの多くが苦戦を強いられています。
一方でハイブリッドカーのリチウム電池は、開発周期が新型車の投入タイミングと同様で、基本設計から10年ほど仕様変化のない電池です。大量に生産するため多少安価に製造することが可能です。 |
◆ENEACCUMシリーズのリチウムイオンポリマー電池
ENEACCUMで採用しているリチウムイオンポリマー電池には、中国深セン市に本社を持つKAYO社製造品を採用しています。KAYO社は、日産50万個以上のリチウムイオンポリマー電池を製造し、NOKIA、Sony、PHILIPS、LG、MOTOROLA、Appleなどの大手携帯電話メーカーのスマートフォンなどに供給しています。日本コムネットはKAYO社内に中国技術開発センターを置き、常に新しい蓄電システム製品の開発を行なっています。そのため、日本国内では調達の難しいリチウムイオンポリマー電池を搭載した蓄電システムを安定供給することが可能です。
また環境面から見ると、リチウムイオンポリマー電池の電極材料には希少金属であるコバルトを含むため、将来へ向けたリサイクル市場の形成も進んでいます。リン酸鉄リチウム電池の電極はリンや鉄のため回収の価値が低く、費用をかけて処分する必要がありそうです。
◆大型のリチウムイオン蓄電システム
株式会社日本コムネットが開発する蓄電システムは、オフィスなどで利用する電力容量6kWh以下の蓄電システム(ENEACCUMシリーズ)の場合には、リチウムイオンポリマー電池を採用していますが、10kWhを超え設置工事などを伴う大型のシステムには、リン酸鉄リチウムイオン電池の採用を提案しており、現在、大規模太陽光発電所向けリン酸鉄リチウムイオン蓄電システムの実験中です。